2023年8月25日 Lab.Firstを公開しました。

細胞培養~成功のための10のヒント

Tech Info

Enzo Life Sciences(ENZ)社 | “10 Tips for Happy Cells

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Enzo Life Sciences,Inc. for providing “10 Tips for Happy Cells” information presented here.

Enzo Life Scences社は研究キット・生化学物質・生物製剤の研究用試薬の供給において長年培った経験を提供しています。
科学者が科学者を支援するという理念のもと、Enzo Life Sciences社は、ライフサイエンスと創薬の分野で研究するお客様に関連情報を提供することの価値を実感しています。私たちは、日々の業務の改善や研究の質の向上に役立つ、シンプルで有用なヒントを提供します。本稿では、細胞培養の高い基準を維持するためのヒントをご紹介します。

1.すべての実験材料が無菌であることを確認すること。

クロスコンタミネーションは細胞培養の最大の敵です。わずかな汚染でも数週間の研究を台無しにしてしまいます。インキュベーターは温かく湿った状態であるため、真菌が繁殖しやすくなっています。さらに培地ボトルやピペット、その他の関連資材は培養したものと一緒にクリーンベンチに入れる前にエタノールできれいに拭き取り、クロスコンタミネーションを避けるようにしましょう。

2.培養は慎重に行い、インキュベートすること。

細胞培養の繊細さはいくら強調してもしすぎることはありません。激しい振動・一定した振動・継続的な温度変動などが生育パター ンに不利な影響を与える可能性があります。インキュベーターが水平で温度プロファイルが安定しており、かつ、モーター駆動の器具から離れていることを確認しましょう。さらに一度に複数の細胞株を扱うことは、細胞の遺伝子型や表現型に影響を及ぼす可能性があるため、避けた方がが無難です。細胞株の同一性を保証または確認するために、定期的にSTR(Short-tandem repeat)プロファイリングを行うことを推奨しています。

3.凍結保存した細胞は、使用前に適切に解凍すること。

解凍は初歩的なステップに思えるかもしれませんが、細胞へのダメージを避けるために適切に行うことが不可欠です。長時間の熱への曝露と遠心分離は、細胞を培養できない状態にしてしまいます。従ってクライオバイアルは37℃のウォーターバスに約2分間入れ、DMSOによる直接的な損傷を防ぐため、培地で希釈します。

4.対数増殖期にある、活発に増殖している細胞を使用すること。

細胞培養のプロセスには3つの段階があります。停滞期(lag phase)、対数期(log phase)、および定常期(plateau phase)はそれぞれ細胞増殖の高低もしくは無さを表します。最も活発な細胞は健康で分裂が早く、対数期 の中心である約70-80%のコンフルエンスで増殖します。

5.継代前に細胞が完全にコンフルエントにならないようにすること。

コンフルエンスとは、フラスコ内の表面積のうち、接着細胞で覆われている割合を指します。完全なコンフルエントは表面の100%が接着細胞で覆われていることを意味しています。この状態は細胞が成長を続けられないことを意味するので、この状態を避けることが重要です。活発に増殖している細胞を使い続けることは必須となります。

6.最適な培地開発戦略を選ぶこと。

細胞培養において、培地は培養の質・収量・コストを左右する非常に重要な要素です。実験の有効性と結果を最適化するためには、各培養に合わせて培地を調製することが不可欠です。どの方法で培地を開発するかを決める際には、いくつかの選択肢があります。
・既製品を購入する
・ラボで培地を開発する
・他の会社と協力してより特殊な培地を開発する
・これらのどれかを組み合わせること
などが挙げられます。開発戦略を選択する際に考慮すべき要素には、スケジュール・材料費・製品開発の段階などがあります。

7.乾燥粉末培地を溶液に入れる際は、水質を評価すること。

市販の液体培地は乾燥粉末培地(DPM)溶液よりも高品質の結果をもたらす傾向があります。これは市販培地メーカーの研究室内の水質に起因している可能性があります。水中では細菌が急速に増殖するため、エンドトキシンやその他の汚染物質を監視することが重要になってきます。培地を製造している企業ではバクテリアフィルターやボールミルなど、バクテリアの増殖を監視・制御するためのリソースがありますので、そのような企業によって開発された液体培地を使用する方がより信頼性があります。

8.細胞の代謝特性を操作して、培地を最適化すること。

使用後の培地の分析は、アミノ酸やビタミンを含む重要な培地成分の代謝速度を特定するのに役立ちます。細胞増殖期と静止期から得られた動的代謝プロファイルは、化学量論的に、基礎培地とフィード培地のバランスを取ったり、特定の反応に培地の焦点を向けたり、バイオマス形成とタンパク質生産の比率を変えたりするために利用可能です。

9.細胞を過剰にトリプシン処理しないこと。

トリプシンは、細胞を容器に結合するために必要なタンパク質を消化して接着細胞を剥離させるプロテアーゼ酵素です。細胞がトリプシンに長時間さらされたままになると、細胞膜のタンパク質が切断され始め、細胞が適切に機能する能力に影響を与える可能性があります。

10.培養液に抗生物質を絶えず使用しないこと。

細胞培養が抗生物質に頻繁にさらされるようになると、抗生物質に対する耐性を持つ株が発生し始めるようになります。このような現象は根本的な汚染を覆い隠し、実験に極めて不利になる可能性がでてきます。

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