(vol.4 からの続き)
フローサイトメトリー データ解析 - ゲーティング手順
フローサイトメトリーのデータ解析では、ゲーティングを基にして全体的な解釈をします。ゲートとは、解析対象の集団を定量し研究する上で、散乱またはマーカー発現のような共通した特徴をもつ細胞集団の周囲に配置した境界のことです。
前方および側方散乱ゲーティング
まず、細胞の散乱特性を基にしてゲートを行います。前方(FSC)および側方散乱(SSC)より、おおよその細胞の大きさと粒度がわかります。血液細胞集団の解析を例にとると、血液は様々な大きさや粒度の細胞から構成されていますので、散乱を基にしたゲーティングが非常に有用です(以下のドットプロットを参照)。赤色四角内の顆粒球はSSCが高いため、比較的容易に単球やリンパ球との境界を画定できます。黄色四角内の単球は、リンパ球(桃色四角)とは明らかに異なる集団を形成しており、より小さく粒度も低いです。紫色四角には壊死組織片とRBCsが含まれ、FSCとSSCの何れも最も低い値です。散乱光のゲーティングは、純度が問題にならず細胞を大量に選別する際に有用なツールです。
標識集団ゲーティング
散乱特性を基にして特定集団の境界を選択した次のステップでは、表面(または細胞間)マーカーを基準にしてさらに亜集団へと分割していきます。以下に示した典型的なドットプロットでは、FSCやSSCを基にしてリンパ球を最初にゲートし、その後、それぞれCD3やCD19の表面発現を基にしてT細胞とB細胞を分離します。右のドットプロットでは、T細胞とB細胞集団の明瞭な分界が見られます。
バックゲーティング
バックゲーティングは、ゲーティングパターンを確認する手法です。特定のゲートにより同定された集団を、完全に異なるパラメータで再度ゲートします。一般に、新しいゲーティング方法を試行している場合や非特異的染色や偽陽性の疑いがある場合に行われます
以下のドットプロットでは、血液細胞をまずCD3とCD14発現でゲートしてT細胞と非リンパ球とを分離しました。緑色、赤色、および青色で示した楕円は、それぞれT細胞、顆粒球、および単球を示しています。使用したゲーティング方法によるこれら集団の独自性を検証するため、FSCやSSCパラメータを用いて戻しゲーティングを行いました。右のドットプロットより、これらの散乱特性に基づいて各集団が確認できました。
*注:使用するグラフの種類や統計は解析ソフトウェアプログラムによって異なります。お使いのフローサイトメトリー機器のマニュアルに準じてどれを利用すべきかご検討ください。
掲載元:コスモ・バイオ株式会社