2023年8月25日 Lab.Firstを公開しました。

ウエスタンブロット~成功のための10のヒント

Tech Info

Enzo Life Sciences(ENZ)社 |10 Tips for Successful Westerns”

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Enzo Life Sciences,Inc. for providing “10 Tips for Successful Westerns” information presented here.

Enzo Life Sciences社では現在、研究キット・生化学物質・生物学的製剤の供給において25年の経験を持っています。”科学者が科学者を支援する”企業として、ライフサイエンスと創薬の分野で活動するお客様に関連情報を提供することの価値を実感しています。私たちは、日々の作業や研究の全体的な質を向上させるための、シンプルで有用なヒントを喜んで提供します。本稿では、細胞や組織を使用した実験において、ルーチンの定性的および半定量的なタンパク質の分析法として、最も一般的な方法である、ウエスタンブロットのヒントとコツについて説明します。

表紙画像について

ウエスタンブロットがカウボーイと何の関係もないことはしっていますが。。。(ありがとうサザン!)、この素敵な写真をアイキャッチとして使用しました。

1.タンパク質の分解を避けること。

サンプルは常に氷冷下で迅速に調製し、タンパク質の分解を避けるために汎用プロテアーゼ阻害剤を加えましょう。フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)のような一般的に使用されるプロテアーゼ阻害剤は半減期が短い場合があり、時間の経過とともに再補充が必要になることに注意が必要です。

2.適切なサンプルの準備をすること。

一般的にウエスタンブロットのサンプルは完全なLaemmliサンプルバッファーで5分間煮沸した後、遠心分離し上清のみをSDS-PAGE分析に使用します。変性条件下でゲル電気泳動を行う場合、サンプルバッファー中の還元剤(ジチオスレイトール(DTT)やβ-メルカプトエタノールなど)の実際の濃度は、すべてのタンパク質性ジスルフィド結合を効果的に分解するのに十分な高濃度である必要があります。サンプルバッファーに十分な還元剤(注意:有効濃度は時間とともに低下します)が含まれているか不安な場合は追加してください。サンプルに害はなく安全です。

3.サンプルを煮沸すべきかすべきでないか?

多剤耐性(MDR)タンパク質のように高度にグリコシル化されたタンパク質や疎水性タンパク質は、沸騰させると沈殿することがあるので注意してください。そのような場合は5分間煮沸するのではなく、サンプルバッファーと一緒に60℃で1時間インキュベートすることを検討する必要があります。

4.Denaturing-PAGE と BN-PAGEの比較。

その後のウエスタンブロット解析のための標準的なSDS-PAGEは、還元・変性条件下で行われています。しかし場合によってはこの処理がモノクローナル抗体によって認識される三次元エピトープのコンフォメーションを破壊することがあります。そのような場合には、ブルーネイティブゲル(blue/native gel)泳動を行う必要があります。三次元構造を保持するため、標的タンパク質は標準変性条件下よりもブルーネイティブゲルの方が見かけの分子量(MW)が高くなることに注意してください。

5.ターゲットタンパク質の性質に合わせてゲル濃度を調製すること。

ゲルの種類とポリアクリルアミド(PA)含量は、目的タンパク質の分子量と分子量測定の精度に応じて選択します。標準的なSDS-PAGEゲルのPA濃度は7~15%です。良好な分離能を得るためにはターゲットタンパク質の分子量が高くなるにつれて、より低濃度のポリアクリルアミドゲルを使用する必要があります。特に高分子量範囲にまたがる複雑なタンパク質混合物の場合、最高の分離能を得るためにグラジエントゲルを使用する必要があるかもしれません。Laemmliグリシンベースのバッファーを用いた標準的なSDS-PAGEの最小分解能は約16kDaであることに注意してください。従ってより小さなタンパク質やペプチドに対しては、Schäggerとvon Jagow (1987)によって開発されたような別の方法(BN-PAGE)が必要かもしれません。

6.高分子量タンパク質の転写について。

高分子量タンパク質(100kDa以上)は一般に、ウェット式のトランスファー装置でオーバーナイトで実施する場合、トランスファーバッファーにSDSを添加した方がより効率的にトランスファーされることに注意してください。また、メタノールは高分子量タンパク質のゲルマトリックスからの溶出を阻害するため、転写バッファーからメタノールを除去する必要があるかもしれません。高分子量タンパク質にはニトロセルロースの代わりにPVDFメンブレンを使用することをお薦めします。またポンソーS(Ponceau S)を使用してタンパク質がゲルからメンブレンに効率よく転写されたことを確認し、ゲルをCBB(Coomassie Brilliant Blue)で染色します。

7.等電点(pI)の高いタンパク質の転写について。

タンパク質をゲルからメンブレンに移すには、トランスファーバッファーのpHがそれぞれのタンパク質のpIよりも高くなければなりません。なぜなら電気泳動中に正電荷を帯びた陽極に向かって移動して初めてメンブレンへの移動が起こるからです。pIがトランスファーバッファーのpH(通常約8.3)と同じかそれ以上のタンパク質の場合、トランスファーバッファーにSDSを添加してタンパク質に負電荷を付加することができます。さらにセミドライトランスファーシステムを使用する必要がある場合もあります。

8.バックグランドを抑えるまでは抗体を非特異的と判断しないこと。

すべての抗体やサンプルタイプが確立されたウエスタンブロットのプロトコールに直接適合し、一回できれいなブロットが得られるわけではないことに注意してください。バックグラウンド染色の原因となるパラメータは数多くあり、抗体の非特異的染色と混同されやすいのです。注意深くアッセイを最適化することでほとんどの場合はバックグラウンドが大幅に減少し、ウエスタンブロットできれいなシグナルを得ることができるはずです。この最適化には適切なコントロールの使用が不可欠です。

9.ブロッキングが標的タンパク質に適切であることを確認すること。

ウエスタンブロットのブロッキングに一般的によく使用されるのはスキムミルクです。しかし抗体によってはミルクやカゼインでブロッキングすることによりその性能が著しく損なわれる場合があります。なぜなら抗体が検出する抗原/エピトープが、ブロットのバックグラウンドを上昇させ、陽性シグナルを不明瞭にするのに十分な高濃度でこれらのブロッキング剤中に存在する可能性があるからです。したがってユビキチン・ホスホセリン・ホスホスレオニンに対する抗体などでは、ミルクやカゼインの使用は常に避けるべきす。このような場合にはブロッキングおよび一次抗体とのインキュベーションには、必ず二次抗体宿主の血清またはBSAを使用してください。

10.アッセイのバリデーションには常に実績のあるコントロールを使用すること。

ウエスタンブロットでは信頼性の高いポジティブコントロールとネガティブコントロールを用いて検証することが極めて重要です。特に生産量の少ない内因性タンパク質を調べる場合、良好なポジティブコントロールのライセートであっても、1レーンあたり150µgまでの総タンパク質のローディングが必要になることがあります。また標的タンパク質をトランスフェクションした細胞や精製(組換え)タンパク質をポジティブコントロールとして使用することもできます。ネガティブコントロールとしては常に “二次抗体のみ “のブロットを並行して行い、実際にどの程度のバックグラウンドが二次抗体と検出システムに起因しているかを評価する必要があります。もし入手可能であれば抗体を作製した免疫原性ペプチドをブロッキングペプチドとして使用すれば、バックグラウンド染色と標的タンパク質の真のシグナルを区別するのに非常に役立ちます。

ここで挙げてきたことはちょっとしたヒントですが、実験を成功させるためには洗浄バッファー・抗体濃度・二次抗体など、考慮し対処しなければならない問題が他にもたくさんあることは明らかです。しかし重要なことはウエスタンブロッティングの原理と実際を理解し、タンパク質分析におけるこのアプローチの欠点と限界に留意することです。

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