2023年8月25日 Lab.Firstを公開しました。

最適な抗体を選ぶ7つのコツ

Tech Info

7 Tips for Selecting the Perfect Antibody

抗体は、分子ターゲットの検出及び捕捉のための最も特異的なツールの一つです。適切な抗体は、ターゲットタンパク質の存在、量、動態、さらには結合相互作用を明らかにする上で重要な役割を果たします。ただし、200 万を超える市販の抗体と 300 以上のサプライヤーから適切な抗体を見つけることは、非常に困難で複雑な作業となります1 。本稿では、実験に最適な抗体を絞り込むのに役立つ 7 つの重要なヒントをまとめました。

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Biotium, Inc. for “7 Tips for Selecting the Perfect Antibody” information presented here.

1.適切なターゲットを選択する

最も効果的なターゲットタンパク質または抗原を特定し、その複雑さを理解することが、適切な抗体を選択する上で重要です。密接に関連したタンパク質との相同性は交差反応を引き起こす可能性があります。タンパク質には複数の名前、アイソフォーム、スプライスバリアント、および翻訳後修飾を有する場合があります。ターゲットの特定の部分を認識する抗体に依存する研究の場合は、抗体が産生されたエピトープに注意し、それが目的のドメイン内にあることを確認します。固定法によっても抗原が変化する可能性があり、標的またはエピトープを抗体にアクセスできるようにするために透過処理または抗原賦活化処理が必要になる場合があります。しかし、固定と透過化の両方が免疫親和反応に影響を及ぼす可能性もあります。UniProt や GeneCards などのタンパク質データベースは、より多くの情報を得るための優れたリソースです。

2.一次抗体または二次抗体?

「直接的な」標識では、抗原に結合する一次抗体が直接検出されます。「間接的な」標識では、選択した抗原に対する一次抗体を検出するために標識二次抗体を使用する場合に使用します。

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直接標識された一次抗体の使用は、必要なステップと試薬が少なくて済み、マルチプレックスを必要とする一部のアプリケーション(フローサイトメトリーなど)に適した方法ですが、一次抗体に結合した蛍光色素のみが存在するため、シグナル強度は低くなります。検出方法やターゲットの発現の程度によっては、許容できる場合があります。Biotium社のCF®色素などの一部の色素は、抗体あたりの色素分子の濃度が高く、溶解性が向上し、非特異的結合が少ないため、バックグラウンドが低く、S/N比のが低いという問題を最小限に抑えることができます。また、直接標識された一次抗体を用いることで、同じ宿主由来の抗体を組み合わせてマルチプレックス化することができます。これについてのより詳細な情報は、Biotium社の 「Tech Tip on Combining Direct IF and Indirect IF Using Primary Antibodies from the Same Host」をご覧ください。

二次抗体を使用すると、より多くのステップと試薬が必要ですが、複数の二次抗体が単一の一次抗体に結合してシグナルが増幅されるため、感度が向上します。二次抗体はチラミドシグナル増幅 (TSA) にも使用でき、少量の抗原のシグナルをさらに強化し、顕微鏡を用いる実験のマルチプレックス化することも可能です。チラミド増幅キットを用いたマルチカラー標識の詳細については、こちらのテクニカルティップを参照してください。

3.種の互換性

種によってターゲットが異なるため、抗体がサンプル種に対して検証されていることを確認する必要があります。ほとんどの場合、特に二次抗体を使用する場合は、サンプル種とは異なる宿主種で作製された抗体を選択する必要があります。広く研究されているモデル生物については、通常、バリデーション済みの抗体が入手場合が多いです。サンプル種に対してバリデーションされた抗体が見つからない場合は、抗体の性能と特異性をご自身で評価する必要があります。抗体は比較的保存されたドメインに対して生成されることが多く、エピトープの配列相同性が 75% と低い場合でもターゲットを認識する可能性があるため、実験に用いてみることを検討してもよいかもしれません2

さまざまな種類の免疫グロブリン(IgG、IgM、IgYなど)も、交差反応性およびマルチプレックスに影響を与える可能性があります。例えば、IgG(H+L)と反応する二次抗体は、重鎖と軽鎖の両方のエピトープと反応するため、他の一次抗体のアイソタイプやIgGの異なるサブタイプと反応します。反応性のために特定のアイソタイプを指定する二次抗体(例:IgG2a)は、特異的結合のために他のアイソタイプに対して交差吸着されます3。 特異性よりもシグナル強度と検出範囲を求める場合は、特定のターゲット上の異なるエピトープを認識する抗体の混合物であるポリクローナル抗体を検討してください。より高度な特異性と一貫性が要求される実験では、モノクローナル抗体を検討することをお勧めします。

4.製法と精製度

抗体はさまざまな製法および精製度で入手できます。抗体は PBS 中の純 IgG として供給されますが、BSA、ゼラチン、グリセロール、アミノ酸などの安定剤が添加されている場合もあります。血清、腹水、または上清中の抗体の粗調製物には、不要な免疫グロブリンやその他の成分が含まれている可能性があり、結果が歪曲されないように除去する必要があります。蛍光色素やその他の種類の標識で抗体を標識する場合、アミノ酸、グリセロール、トリスなどの添加物は標識効率に影響を与える可能性があるため、これは特に注意が必要です。

5.抗体とアプリケーションの検証

バリデーションされた抗体を選択することで、良好な結果を得ることができます。サプライヤーは、多くの場合、検証済みのアプリケーションを製品のWebサイトや添付文書に記載します。抗原の状態は実験内容によって変化する可能性があるため、ウェスタンブロッティングなど、あるアプリケーションでバリデーションされた抗体がフローサイトメトリーなどの別のアプリケーションでうまくワークするとは限りません。たとえば、抗原は通常、ウェスタンブロットで変性されますが、顕微鏡実験やフローサイトメトリーでは、ネイティブな状態で存在しています。自分と似たような実験で抗体が使われた例が論文等で公表されているのを見つけることは、成功を予測する最良の方法の1つです。PubMedとCiteAbは、他の研究者がどの抗体を使用しているかを判断するための優れたリソースです。また、サプライヤーによって検証された抗体を探すことも価値があります。Biotium社では、フローサイトメトリーのために社内で慎重にキュレーションされ、広範囲に検証されたモノクローナルBiotium Choice抗体を提供しています。

6.マルチプレックス

マルチプレックスにより、1つのサンプルで複数のマーカーを同時に検出できます。交差反応性とバックグラウンドを最小限に抑えるには、種と免疫グロブリンのクラスを慎重に検討することが不可欠です。高度に交差吸着された抗体が最も効果的であり、実験によっては最大数十の異なる抗体が必要になる場合があるため、直接結合した一次抗体を使用することが、多くの場合で好まれます。蛍光標識抗体を使用する場合は、発光スペクトルが重複していないコンジュゲートを選択することを忘れないでください。

ラットの腸の凍結切片は、TrueBlack® IFバックグラウンドサプレッサー(透過処理)でブロッキングし、CF®647Mix-n-Stain標識抗-Panサイトケラチン(マゼンタ)及びCF®488A Mix-n-Stain®標識抗-ヒストンH1(緑色)で染色した。抗ヒストンH1は、TrueBlack® IFブロッキング緩衝液(透過処理)で希釈した。

7.サプライヤーから提供されるリソース

ほとんどの実験では、トラブルシューティングと最適化が必要です。知識豊富な技術サポートと役立つリソースを備えたサプライヤーを選択することで、貴重な時間と試薬を節約できます。これらの資料を参照して、抗体の最適な再溶解、保存、分注方法を決定し、記載されている特別な考慮事項に注意してください。これらの文書は、通常、さまざまなアプリケーションに最適な濃度の提案も提供します。Biotium社では、製品情報文書に加えて、抗体選択ツール、抗体ベースの検出のためのさまざまな技術ヒントと一般的なプロトコルを提供しています。

Biotium, Inc.