2023年8月25日 Lab.Firstを公開しました。

免疫アッセイにおけるコントロールの重要性

Tech Info

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank the SouthernBiotech for providing “The Importance of Immunoassay Controls” information presented here.

コントロールは、実験データを正しく解釈し、アッセイが長期にわたって行われる場合に一貫した結果を得るために非常に重要です。 ほとんどの生物学的アッセイには陽性および陰性のコントロールサンプルを含めるべきですが、フローサイトメトリー、免疫沈降法(IP)、ELISA などの実験では、結果を正しく解釈するためにさらに別の種類のコントロールを加えることがよくあります。

コントロールとは何ですか?

コントロールは、適切に設計された実験において不可欠な要素であり、アッセイのパフォーマンスをモニタリングし、結果を検証するために使用されます。 これらには、通常、既知の陽性および陰性サンプルを含む「生物学的コントロール」や、フローサイトメトリーの実験において複数の蛍光を識別する際に使用する「ワークフローベースのコントロール」があります。生物学的コントロールは通常すべてのアッセイで使用されますが、その他のコントロールはより限られた用途でのみ使用されることがあります。例えばELISAを開発する際には二次抗体のみを使ったコントロールを用い、望ましくない交差反応がないかを確認することがありますが、長期的には必要ありません。

生物学的コントロールにはどのようなものがありますか?

生物学的コントロールとは、標的分子を発現している、もしくは発現していないことが確認されているサンプルのことです。多くの場合、測定対象物の発現が査読付き論文で確認されている、または Human Protein Atlas のようなオープンアクセスリソースで確認されている、細胞や組織の種類が使われます。陽性コントロールの他の例としては、 標的分子を発現させるためにトランスフェクション(遺伝子導入)、遺伝子改変、またはサイトカインや低分子薬剤などで処理された細胞があります。陰性コントロールとしては、CRISPR や RNAi などの技術によって標的分子の発現をノックアウトまたはノックダウンした細胞が使われることが増えています。また、実験で、特定の処理に対する反応を調べることが目的の場合には、処理済みのコントロールサンプルと未処理のコントロールサンプルを両方を含める必要があります。

ワークフローベースのコントロールが重要なのはなぜですか?

ほとんどの免疫アッセイのワークフローには、基本的な手順(ブロッキング、抗体の結合、洗浄、検出)が含まれていますが、技術ごとに根本的な違いがいくつかあります。例えば、ウエスタンブロットは一般的に定性的な結果を提供しますが、ELISA は通常定量的です。また、IHC(免疫組織化学)は単一の測定対象物を検出するために使用される場合もありますが、フローサイトメトリーは複数の標的分子を同時に測定することがよくあります。さらに、アッセイによって検出方法にも違いがあります。また、一部の免疫アッセイでは細胞溶解液や生体液を用いるのに対し、別のアッセイでは細胞全体や組織切片が必要になることもあります。このため、コントロールは状況に応じて設計する必要があります。ワークフローベースのコントロールの例としては、以下のようなものがあります。

・標準曲線を作成してテストサンプル内に存在する測定対象物の量を決定するための ELISA 用の既知濃度の精製免疫グロブリン
・フローサイトメトリーにおいてバックグラウンドシグナルの評価、ゲーティングの設定、スペクトルのオーバーラップの補正に必要な様々な蛍光ベースのコントロール

フローサイトメトリーのコントロールとは

典型的なフローサイトメトリーの実験では、蛍光色素で標識された抗体を使用して、混合集団の中の個々の細胞について、約5〜10個の異なるパラメーターを検出します。データの解析方法が独特であること、そして蛍光色素の発光スペクトルが互いに重なる可能性があることから、フローサイトメトリーの実験では正確な結果を得るために複数のコントロールを含める必要があります。

非染色コントロールとは:
非染色コントロールは、リボフラビン、NADH、ヘム基などから生じる自己蛍光のレベルを確認するのに役立ちます。これらの自己蛍光のレベルは細胞の種類によって異なります。このコントロールはテストサンプルと同様に処理しますが、一次抗体や二次抗体などの試薬を添加せずに作成します。

アイソタイプ コントロールとは:
アイソタイプコントロールはターゲット特異的抗体と同じ宿主由来で、かつ同じアイソタイプを持ちますが、測定対象物を認識しない抗体です。これらは、観察された染色が Fc 受容体、細胞の他のタンパク質、あるいは蛍光色素などへのオフターゲットの結合が原因ではなく、特異的なものであることを確認するために使用されます。

FMOコントロール(Fluorescence-minus-one control)とは:
FMOコントロールは、多重染色パネルで使用する蛍光色素の内、1つの色素だけを除き、残りすべてで染色したサンプルです。このコントロールにより、研究者は、除外された1つの蛍光色素のシグナルが他の検出チャンネルにどのように漏れ込むかを理解することができます。  

コンペンセーションコントロールとは:
コンペンセーションコントロールは、陽性集団と陰性集団の両方を含むサンプルで、単一の蛍光色素で染色されたものです。これらのサンプルをすべての検出チャンネルで測定することで、蛍光の漏れ込みを補正することができます。通常、補正処理は自動化されたソフトウェアによって行われます。

細胞生存率コントロールとは:
細胞生存率コントロールは、死細胞の存在によって生じる偽陽性を除去するために使用されます。死細胞は自己蛍光を発することがあり、また抗体に非特異的に結合することもあるためです。細胞の生存率を評価するために用いられる色素には、以下のようなものがあります。

・ヨウ化プロピジウム(PI):DNAに挿入されると赤色蛍光を発します。膜不透過性のため、膜が損傷していない細胞を排除することができます。
・7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD):PI と同様の機能を持ちます。
・カルセインAM:生細胞内のエステラーゼによって加水分解されて、緑色蛍光を発するカルセインを形成します。

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